れど、今年はかんべんしていただきます。カバーはパリッとしたのつけますから、ね。毛布も、もう一枚の方、洗いましょうね。七月八月九月の中頃まで私がいないと、実に不便で、すまないと思います。寿江はもうどこへか行くのだそうですし、せめて一度ぐらい行ってもらえるといいのだけれども。
 不思議なものね、生活をこまかく知って、病気の世話もあれだけしてくれたのだから、生活の必要事が会得されて、事務的にやって貰えそうなのに、全く反対というのは。気分による生きかたというところ、どうしたって抜けないで寧ろ年のせいでかたまって来る、これは殆ど腹立たしいことです。死ぬ生きるという時しか奮起しない。だから私はよく半ば苦笑していうのよ。この家ではひっくり返りでもしない限り、本気にならない、と。何という目標なしに生きることも、多くの人の人生がそうと云えばそうかも知れないが、働かなければ食えないということのない、東京にいなければならないというのでもない、戦争へ行かなければならないというのでもない、ましてや火のない冬の石室住居になんか耐える必要もない、という人々の生活には、何とも云えないチカンがあって、それこそ根本の病源
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