の方は当がなくて困りますが。明日は日曜だから待ってみて、次の段どりをします。『日本評論』、『文芸』、『独語文化』はつづけられます。『文芸春秋』に西村茂樹のことを山田孝雄がかいていましたね、ああいう政治家国学者にとかく評されて祖父も苦笑でしょう。『衛生学』はまだ発刊されていないそうです。もう本屋に久しい前から申しこんでありますが。
森長さんのこと承知しました。火曜頃届けます。手紙をつけて。冬シャツは安積の方をこの夏しらべて貰います。私ももう一枚は無くてはならないと思ってそれで気にして居りますから。今年着ていた「袖抜け」と命名されたのは、そうなのよ。十年来のものです、そして肱がぬけましたか? 実によく役に立ちいろいろとすてがたいシャツ君ですが。では大事に洗ってよく虫よけいれて、休ませてやりましょうね。辛苦を倶にしたものですもの。そういえば今年の下着、二いろの布の合わされた綿入れはどこにいましょう? 前でしょうか? 前へお願いいたします。私はお言葉を服膺《ふくよう》して出かけませんが、とりにだけは行って貰いますから。
ペンさんの嫁入り先の家は台湾の日糖とかいう会社につとめています。それは親父。若い人は石油の発掘専門の統制会社につとめています。姉たちは財閥の小番頭の又その番頭というようなところに嫁入っています。十三四とか部屋のある邸宅に今は若い連中だけいる由。花嫁は妹とともにその妹が嫁入る迄その家の掃除をしていなければならないから大変です。親戚に誰かかなり偉い司法関係の役人がいて(大臣級らしい。現役ではなく)、息子はそのおかげで就職万端どうやら形をつけてもらったらしい話です。若い人とつき合はありません。
今はペンさんに迎えをして貰っているだけですが、六月一杯でおやめのことにしてあります、忙しくもなるでしょうし。
女の気持は自分のことを考えてもいくらか推測がつきますから、その点はいくらか考えていたつもりです。
同じ病気とたたかうにしても、医者が自分の効能書をよく見せようと診断を重く重くともって行って、恢復する条件がないようにないようにとするようなひどい場合、患者はどうしたってその診断に服すまいという気がおこるものではないでしょうか。よほどちゃんと医書もよんで病気の条件とその養生法とを客観的に判断出来ないと、この医者にころされていられるものかという気から下らぬ売薬に目
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