たのね。ドイツ語が自由だったにしろ。
 私もどうやらやっと仕事に向って来たようです。でも辛いのよ、この間叢文閣の本、実に面白くて、丁度そちらへの途中、新書の「アラビアのローレンス」をよんでいて、ローレンスの悲劇が何と一九一八年をめぐる世界的な意味をもつかと思って、興味おくあたわずです。ストレイチーという人(エリザベスなんか書いている)がもし真に歴史小説家ならば、たり得るならば、「アラビアのローレンス」こそとりあげるべきです。でもストレイチーには書けないでしょう、ストレイチーは個人の心理のニュアンスを追ってものを分析するから。ローレンスの悲劇は分らないわ。歴史小説のテーマはつまりはこういうモメントでつかまれなくてはうそです。あの本をよみながら殆ど亢奮を覚えました。「スエズ」その他引つづきよみたいものが出て来て、ほんとにあの本はうれしうらめし、よ。そして又一方には、こういう本の面白さ、現実性に対して、同等の熱量をもつ小説というものが実に不足を感じます。文学の立ちおくれということは、単純でない理由をもっているから、或意味でおくれているのが本当ながら、しかし本質が非常に弱ったものの上におかれて
前へ 次へ
全471ページ中397ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング