っぱり広い野面に視線が向けられた感じです。
そういう狼の子たちの育つのが、育てるのがたのしみで、そのそれで新しく引越す生活に自分としてのはっきりした心持のよりどころ、中心が出来たわけです。都合のためだけで、ああいう空気の中に入ってゆく気は迚も迚も出ないのです。
つかまえたものが心にあれば、私は愚痴もこぼすまいと思います。ぐるりの人たちの生活態度にばかり神経が反応するという弱さも生じないでしょうと思います。このことは私として最も修業のいることの一つよ。そのひとたちはそのひとたち、私たちは私たち、その各※[#二の字点、1−2−22]の生きかたで生きてゆくということは分り切ったことで、しかも時々何だか感情が分らなくなるわ。余りいろんなものが流水の表面に浮んで、一方の岸で水はあっちへ流れているようなのに、こっちでは水はこっちへ流れているようだったりすると。
でも、私はちっともそういうことについてよけいな心を苦しめなくていいのだし、おせいっかいはいらないことなのね。自分のことにもっと謙遜に全力をつくしていればいいのだわ。自分が全力をつくしていれば、あるところでその流れはやはりこっち向きだっ
前へ
次へ
全471ページ中350ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング