いました。
 蓑《みの》を着た人夫がどっさり出ていて、そこいらに腰をおろしたさんだわらがいくつも散っている景色は物々しい眺めでした。汽車はそういうところは徐行いたしますしね。人々は窓からのり出して線路をのぞくのよ。主に静岡までです。
 ここも汽車に近いこと、山にこだまする汽笛の音を久しぶりでききます。きのうはトラックが七十台うちの前を通ってゆきました。うちのは年式が古すぎて徴用にならないのです。うちの方はいろいろ余り無理しないで、やれるところ迄やってゆくから心配しないように、よう云うつかわせということです。
 心から達ちゃんが早く無事にかえることを願います。健気な女のひとたちの勇気が使いはたされてしまわないうちにね。
 輝が風邪をひくといけないから、友ちゃん余りおそくないうちにかえって来る筈です。達ちゃんが友ちゃんと輝のかえる汽車まで送って、そして来れば友ちゃんは送られた心持ものこされて何かしのぎよいでしょうと思って。自分たちが遠ざかり、そこに立っていた人を思い出す方が、段々小さく小さくなって行った人を思い出すより楽よ、ね。

 七月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県島田より(封書)
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