あるわ、生活感の。私にそれがいいことでしょうか。決して決して、そうではない。心の声がそう叫びます。その叫びは本当よ。しかるが故に、林町へ送られるのは私でなくて荷物であるべしということにもなるわけです。荷物がいつかかびたりくさったりしたって、それはもの[#「もの」に傍点]だわ、生きている私ではないわ。生きている私は飽くまで生きていなければいけないわ。本当に仕事をする生活、勉強し、精励な生活、それは、自分にこれでいいのだと納得出来ない生活からは生れず、私はいつもそうです。これまでだって。親のいた頃だって林町にいきりになれなかったのですもの。家の件は、こういう工合に推移して来て居ります。何とか、こっちの方向で解決したいと思います、そして、あなたが「朝の風」についてあの女主人公が部屋借りにうつらなかったことを必然がないと云っていらした、そのことを思い当ります。そうなって行って、それではじめてわかるという道があるものなのね。では明日。
 珍しくきょうはGペンでかいていて、その方が万年筆よりなだらかでした。

 六月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 六月十八日  第二十九信
 
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