この頃はいろんなインチキ会社が出来てね、とんだ会社員でくみ立てられた会社が、一流会社のようにひとをだましているらしいようです。空巣も大ばやりです、花見にかけてだから。そしてこれは実に面白い、質札買います、という広告が新聞に出ます。もとはなかった広告でしょう? そんな会社にしろ、世間の必然でだぶついて来ているものを吸収して、どしどし破産させてゆく力は旺盛です。そう云えば文芸春秋でよこした国債が大当りでもすればいいのにね。
 太郎、あのお手紙に返事かいたかしら。きょうはおなかをこわして臥ているそうです。あのお手紙に、熱のない風邪のことかかれていて、本当に、と思いました。さっきの肝臓病のこと、肝のあるおかげで肝をつぶすというようなこともあるけれど、こればかりはとれなくてね、盲腸のようには。今夜は大層早寝いたします、何だかくたびれがあるの、くたびれが出ていると分るときは、すこし正気に立ち戻ったわけなのでしょう。土曜日ほんとに御免なさい、考えれば考えるほど、すまなかったと思います。

 三月三十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 三月三十日  第十七信
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