。来年の春島田へ行こうなどと思っていますが、どうなることやら。
スタンダールのナポレオン伝は面白いと思います。スタンダールはナポレオン崇拝で、と云っていますが、決して盲信ではないわ。ナポレオンが学問がなかったために、現象の面しか分らなく、その見かたは上流社会の見かたしかなかったこと、軍を統帥は出来ても、政治的統率力はなかったこと、それは服従すべき者自身に、服従の必然を理解させるどんな考慮をも持ち得なかったことなどをあげていて、なかなか洞察力に富んでいます。スタンダールは、王政復古時代の作家が腑ぬけになった空気の中で、人々がもうナポレオンとは呼ばず、ブナパルト氏と呼ぶ、その卑俗さにムカムカしてあれを書いたのでしょう。スタンダールは一種の硬骨漢です。そして、いつの時代にでも、その時代における硬骨は、人間として理性の判断を自分に向ってごまかさないということにかかっているのは、何と面白いでしょうね。実業之日本社からスタンダールの伝記が出ます。どんなかしら。一つの大きい時代に生きた人を語るには、よくよくその時代の性格がつかまれないとうそね。「赤と黒」の主人公は、卑俗な時代の野心、功名心というものが、どんな屈辱の道を辿るかを書いたというのは面白い、暗示にとんだことです。功名心というものが抽象に存在しないことを教えています。今日の或種の人のための警告です。業績をつむつもりで業《ごう》を重ねているということを自分で知らない人が何と多いでしょう。
もしかしたら、火、金のほかにふらりと行っていいのかしら?
○隣組で大人三人につき玉子一ヶ配給になる由。
○今年の餅は一人につき一キロの由。
十二月七日 [自注8]〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
十二月六日 第五十三信
四日午後のお手紙けさ。ありがとう。きょうは、この三週間前から毎土曜の午後おはなしに行っていたところが最後で、ほっとして気持ようございます。三時間から二時間、一人でお話しつづけもくたびれるけれども、大抵はそれよりながくなって、六時ごろでした。きょうは。一番おしまいだというので、だァれも立ち上らないのですもの。かえりにそこを出ると、みんな門口へかたまって、センセイサヨーナラ※[#感嘆符二つ、1−8−75] と叫ぶのよ。センセイというのはほかならぬアンポンおゆりのことです。断然すごいでしょう? お
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