ます。では火曜に。
十月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
十月十八日 第四十五信
きょうは雨がわり合いい心持の日です。
いかが? そちらのきのうはいかがな一日でしたろう。私はね、早くおきて、午前中ずっとよみかけのものを読んでノートとって勉強して、午後から太郎をつれて目白へ出かけました。
太郎は学校が近くて、通うのに電車にのらず行っているものだから、混んだ電車なんか迚も不馴れで一生懸命でキョロキョロつかまえた手を決してはなさないの。
目白へ行って、顕微鏡で人間の血液、兎の血液、蛙、やもりの血を見たり、自分の爪の間にたまった黒いものの中にどんなこわい妙な形のものがあるかを見たり、髪の毛は松の樹の如し、という見聞をしたりして、お菓子を三つもたべて五時ごろ出かけて、目白の通りのビリヤードのすぐよこの鳥常という昔から出入りの店へよって、御馳走のための買物をして六時一寸すぎかえりました。
二階へあがったらね、となりの皆で食事する方に奇麗な菊がどっさり鉢にさして飾ってあります。火をおこしおなべかけて呼んだら、国男さんと太郎が横一列にあらわれて、どう? ちゃんと並んで坐って合唱なの。「おめでとうございます」凄いでしょう? 見ると、二人は胸に赤っぽい菊の花を飾っているのよ。ほかにおしゃれのしようがないからですって。
やがて、真赤なズボンをはいた泰子がああちゃんにだっこされながらケトケト笑って(これは偶然です、残念ながら。やす子にはおめでたいのが分らなくてね)あらわれて、そのああちゃんは青いような縞のきれいな外出着で、やっぱり髪に花つけているのよ。寿江子のものぐさが夕飯に着物着かえて現れたという、全く驚天動地の盛会でした。
こんな盛況があろうとお思いになって? 一人一人敷居のところで今晩は、ととても気どった声を出して入って来るのよ。見せてあげたい姿でした。御覧になったら、あなたはきっと、むせておしまいになったでしょう。余り素晴らしいから。
ゆっくり御飯すまして、国男さんが、かけ時計の高さを直してくれて、それから一寸三人で(咲と)一仕事やって熟睡いたしました。
きょう、太郎をつれて国と三人で国府津へゆこうということになって、国は植木屋の用事、私はすこし片づけもの(この間から私たちの話に出ていた)をして来ようと思ってあらまし仕度したら、この天
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