いの郵便局で書いて居ります。昔のおもかげと今日のいろいろな人の生活とが狭い通りの上に見えます。店にはやはり品不足。

 七月二十二日 (消印)〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県野原より(山口県・室積港(※[#ローマ数字1、1−13−21])、室積湾鼓ヶ浦(※[#ローマ数字2、1−13−22])、室積公園より見たる周防灘(※[#ローマ数字3、1−13−23])の写真絵はがき)〕

 ※[#ローマ数字1、1−13−21]七月二十一日、さっき郵便局でハガキ出してから、ここのはとばへ来て海を眺めました。このエハガキだと、左から二つ目の船のかげの橋ね、そこの根元の石のところに腰かけて海を眺めたらいい心持で、海をわたって松山へ行って見たくなりました。柳井から何時間かしら。海の上を風にふかれながら渡って行って、道後に一泊してみたいと思いました。但実現のところは不明ですが。

 ※[#ローマ数字2、1−13−22]同。こんなところを御存じ? きょうはバスの中からはじめて光井の小学校を見ました。相当たかいところにあって、松の大木のがけです。あの下に避病院があったでしょう? そこを改造して、奇妙な用途にあてられて居ります。新しく共済病院というのや、ガス会社やも出来ていてよその土地から来たものということを誇らかに身辺に漂わしている細君連が室積の町やバスの中に居ります。

 ※[#ローマ数字3、1−13−23]室積の清木《セイキ》という家具屋を覚えていらっしゃるかしら。そこで友ちゃんの机を買いました。中学校の生徒でもつかえるようなので、輝が今に母さんのお古を頂けるでしょう。十一円五十銭也よ、島田までは届けないというので野原まで届けて欲しいとところを云ったら国広屋と云っていました、年よりの番頭が。おばあさんの家は、あの薬屋のある通りに見える松の古木の先ですってね、岩本のお嫁さんのおさとという前も通りました。うちも店は物がありません。達ちゃんから消息まだなしです。

 七月二十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕

 七月二十三日  島田からの第四信
 十九日づけのお手紙今朝。ありがとう。
 本当に涼しいつづきでした。でも、それではお米が大変でしょう。土用前の十日がよく照りこめばよいというのだってね。その期間が雨つづきでこの頃はこうというのでは困りでしょうね。きのう一日は土用らしくて
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