溌溂とゆかないものであることが生理的にわかって、林町では、私の毛穴はぬりごめよ。精神のそよぎというべきものがどこにもない一家の空気、どう生きて行こうという勢のはずみのどこにもない家、それは全く他人であって、私が二階がりをしているのなら其きりでしょうが、そうでないのですもの、本当に苦しい焦だたしい工合でした。私は何とか落付こうと努力したから猶更ね。
私たちの生活というものは、もうちゃんとあるのよ。それは、そうどこにでもはめこんで、はめ合わせのつくような鈍い角のものではなくなって来ているのね。私たちの芸術的な生活の感覚は、酸素がたっぷりいる種類のものなのだと見えます。
こうやって、それ人がいない、やれこうだと、バタバタやりながらこうやってやりくりしてゆくのが、つまるところ生活の一番能率的なやりかたらしいわ。もっと縮めればどこかの二階へ動くという方向しかないでしょう。
林町なんかで、キューキューつめた仕事出来るものではないということが余りわかってびっくりして居ります。それを今まで知らなかったということで、よ。うちのことがうるさいときには、却って宿屋がいいということもわかります。自分の世界がはっきりしていて、こっちから求めなければ乱されることはありませんから。宿屋へかきにゆくということは所謂家庭の道具立てのそろった人にはさけがたいでしょうね。妻もい、年よりもい、子供たちもいる、という場合、書こうとする世界へ本当に没頭し切るのは、そういう空気をつくらなくてはね。自分の方法としてもこの二つしかないことがよくわかりました。
今度の仕事はうちでやることにきめて居りますが、今に何か別の仕事のとき小説でもかくとき、私はどこかへ出かけたいわというかもしれません。一週間に一度ずつかえりながら。そのときになると又何とかわるか知れないが、マア今のところはそうかいときいておいて頂戴。
三吾さんは朝八時半ごろ出かけて、五時半ごろかえります、うちにいる間は私が在宅ならキーキーはやらない風です。本人がそれほど熱心な勉強家でないし、且つ今のところは生活も例外ですから。
奥さんは浩《ひろ》子さんと申します。やはり同じ土地のひとで、全然の媒酌です。家じゅうの人が皆実にいい人たちだもんだからお嫁さんも安心しているのよ、今のところは。これで愈※[#二の字点、1−2−22]二人きりで暮して年が経つうち
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