ちから集めることが出来て、この次不足しても相当間に合います。光井・島田からさえ送って下すったから。大尽よ。どうぞ御安心下さい。
 きのう『都』にヴァージニア・ウルフが自殺したと出て居りました。[自注5]何だか、分る気がします。彼女の心理主義も、この欧州の混乱に対する気持も。私はウルフが『三ギニー』という本をかいて、今日の歴史の様相と女性の無力さに抗議したというのをよんだとき、ウルフは彼女の心理主義(ジョイスなんかと同じな)からどう脱出するだろうか、それしか彼女の道はないと思っていたの。そしたら死にました。しかも河へ身をなげて。――六十何歳かで。彼女のよく散歩する河辺に愛用のステッキがのこされていたのですって。彼女の愛する沙翁の女で、ピストルを自分のこめかみに当てた女はなかった。河へ身を投げるなんて。何だか実にしめっぽい死にかたで、そんなこと迄或はウルフらしいと云えましょう。「世界よさようなら」という手記を妹に送ってぶらりと出たままの由です。
 それでも、やっぱり欧州の婦人作家ですね。五十に近くなるともう隠居婆さん風になって自分の小さいぬくもりの中にかがまっていないで、さようなら、というにしろ世界よと云うのだから。ウルフの『女性と文学』が翻訳で出ていて、そのこと何かお話ししたでしょう? 本当にあれをよむとこの世界の動きかたをウルフはどう見てゆくだろうかと思いましたが。中公の書き直したのでは終りにウルフの婦人作家についての感想をいくらか批評してふれました。年五百|磅《ポンド》の収入と閑暇と静かな部屋とがなければ婦人作家はよい仕事が出来ないというウルフの考えかたも分るけれど、しかし私たちは、自分たちにそんなものはどこにもないという、そのない[#「ない」に傍点]ことをどう見てどう感じてゆくかということから文学をつくって来ているし、これからもつくるのだということをつよく語ったわけでした。そんなこともこのニュースとてらし合わして見るといろいろ思われます。
 それから文学者の会で松岡と一緒にぐるりと歩いて来た長谷川進一という人の話をききました。三巨頭についてなど。それからその話について質問する婦人作家たちの所謂政治的関心、国際的話題の出しようなど。大変面白かった。というのは、金子しげりと同じようなことしかきかず、同じようにしかきかないという意味で。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1
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