の匂いは気にくわんとこっちを向くのです。実に強情ねえ。笑い出してしまいます。そして、その強情さは何と自然で可愛くもあるでしょう。皮膚がものをいうのでね。
まだこの手紙にははっきりかけませんけれど、私にはたたいてもこっち向くその薄桃色の鼻面が改めて自分にいとしく思われるし、やっぱりどっちへどうするかということで先の十年は大した相異をもつことを痛感しはじめています。積極な生きてゆく態度というものの微妙な複雑さを思います。私が正しい人間であり作家であり、しかもそのままいつしか用に立たないものとなることもあり得るのですもの。いつかあなたが、(もう何年か前の夏ごろ)ちゃんとしているということと女史になるということとのちがいを云っていらしたようなものでね。ちゃんとした作家だということは生活の構えによらないのでね、構えを破るよりたかき構えというものがあるわけでしょう。ここに、まだ自分にはっきりつかめてはいないけれど、大変面白そうな何かの示唆(より芸術家に、と。)が感じられて居ります。ここをいまつかまえてはなさずいるわけです。こねくりながら。
シーツほんとにやぶけね。
五月六日 (消印)〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
五月四日 第二十二信
こちらでどうやら封緘を買えたら、やはりそちらにも出来ましたね。
お恭ちゃんのことについての速達ありがとうございました。おっしゃることもちろんよくわかりますし、そのようにしましょう。
きょう、私がついて保生園へ行って結果をきいたところ、キンが出ているそうですし、(左の方)前からのもので、キキョーをするのに空気が入るかどうかということでした。去年四月にとったというレントゲンの写真を見せてほしいということでした。
けさ、お恭ちゃんあてに手紙いただいて、本当にありがたいとよろこんで居ります。工合によってはうちで(目白で)気をつけて癒して行けたらいいと思っていたのですが、村山のお医者の話では、やはりかえった方がよいとのことですし、相当の期間安静にしているのならやはりここでは駄目ですから。皆がよく心つけて心配してくれて、はげましてくれるから、その点では気持も助って居るようです。
速達でお心づきの点、大丈夫よ。まさか私がそういう風にする女でもないわけでしょう。うちでの仕事は、普通のところから見たら半分にも足りない働きです。それ
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