目でいいけれども、その真面目さがまだ活力を帯びていないし。美川きよが小島政二郎とのことを書いた小説をよんで眠たくなったのですが、どうも閉口ね。婦人作家という職業[#「職業」に傍点]の確立、一家をなす[#「一家をなす」に傍点]ことに、実に汲々たるところが最近のこのひとたちの共通性です。年れいのこともある、女としての男との生活のけたをはずれていることからもある、小説をかくためには一旦常識の世界を見すてているのだから、女がその見すてたところで身を立てるということは、経済上の必要ともかさなって、職業人としての食ってゆける面へだけ敏感になるのですね。ここがしめくくりとしてあらわれる今日の現象です。婦人の評論的な活動のにぶいことと、この一家をなす必要に迫られていることから、明日の婦人作家がどうぬけ出し育って来るかが大きい課題です。これは、文化の、もっともっと大きい課題とつづいて居りますからね。今月はこれを終り迄書いて、初めの部分と自然主義のところをもっとよくして、水野仙子、小寺菊などをもっとよんで、そしてまとめます。それと『新女苑』の Book レビュー。今月は「科学の常識のために」かきましたが、来月は何にしましょうね。私は今迷っているの、もうきりあげてしまおうか、それともいようかと。ここに水野仙子の本は一冊もなくて弱ります。

 七月十四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 これは、この間お話のあった支払いに関することだけの手紙にいたします。
 七月八日づけのお手紙にあった九月二十二日請求の分二通というのも判りました。あれは本当にそうでした。あの節、ともかく一応と云って私が払っておいて、あちらへ話すと云って受とりを先生もって行ってしまっていたので、受とりだけしらべたのでは分らなかったのでした。帳面とつき合わせ判明いたしました。あれなんか性質から云って勿論申します。
 八月三十一日支払の分三通もわかりました。これは月曜日に行って、先ず上げるものをあげて、それからすっかりはっきりするよう、書きつけを渡します。
 今年に入ってからは、今回のが初めてです。その内わけは左の通り。
                          @5.3銭
 一、林鐘年予審             四通│ 二一二枚 │一一・二四
 一、蔵原惟人              二 │ 一九二 
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