の。やっぱり大きくは声の出にくい状態で。電車の遠いのはいいわ。誰とも口をきかず、群集の中で、ひとりの心でいられるのは。二人きりでいられるのは。
途中、時間の都合で神田へまわりました、そして仰云った61[#「61」は縦中横]という番号の改造文庫しらべましたが、この頃の番号のつけかたが変ってしまっていて、どれだか分りませんでした。又あした伺いましょう、でもきっと品切れの分でしょうね、改造文庫は実に少々よ目下。『文学発達史』しか東京堂にありませんでした、そんな工合。
虎の門ではすっかり詳細にしらべました、手元にある分、送ってある分、その他。随分どっさりのものが送られて居りません。富士見町へ行って、そのリストとてらし合わせて、一部ずつちゃんとそろえて届ける約束しました。私が行ってやりましょう、私が行って、やれば出来ましょうから。これもそれもお使では駄目。この数日のうちに一かたつけてしまいましょう。
そして又図書館通いをして、『文芸』のすっかりまとめて、原稿わたして、そして、本腰に長篇にとりかかりです。そしたら細かいもの皆先へのばします。
金星堂のは七月十五日ごろ迄に本になりますでしょう、これは部数も少いけれど。
それから、借かんの話ね、決して妙なことではなくて、全く短期間のことですから、どうか気になさらないで下さい。そのために、あなたが何かおっしゃるというような必要は決して決してないことですから。只、私の小さい水車の渇水について心配していて下さるから、その補供の道を一寸お耳に入れただけなのですから。すぐ金星堂の方のと九月に実業之日本の方のとですんでしまうのですから。
『文芸』の方の本になるのは[自注3]又次の必要のために役立てますし、大丈夫よ。今年は順調の方よ、まだまだ。
記録のこまかい計算は明日おめにかかって。でも、私覚えちがいしていなかったので大笑いしました。やっぱり十一日でしたね、あなたのほかにもう一人九日と思っていた方もあるそうです、書記課へきいて確めてくれましたから、岡林氏が。ゆうべの雨、眠るにいい雨でしたでしょう? 休まったことね。きょうも余り暑くなくて。カッと照りつけられない日の休まった気分はいいこと。では又ね。
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[自注3]『文芸』の方の本になるのは――『文芸』に連載した婦人作家研究を中央公論社から出版することになり、全体
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