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※[#チェックマーク、1−7−91]山本正美のうつしは何でも大した尨大のもので、栗林氏は自分で全部もっているから不用故、一部か二部でよいだろうという意見でした。このことも御考え下さい。そして適当なところへ御返事下さい。
[#ここで字下げ終わり]
それから本について、
冨山房のはつきましたろうか。『読書界』は出て居りますが、あすこはいかにもあすこらしく、ちゃんと実費を払うというのではないのね。只よこすのですね。『書斎』は出ているとばかり思ったら、この十一月から休刊の由です。やはり紙の不足からでしょう。従ってこれはありませんわけです。
島田から光井からそれぞれ返事が来ました。お母さんの御意見では、フォードと云っても大した古いもので、達ちゃんがかえるまでもつか、それもあやしく、もし達ちゃんが売れと云ったら売るつもりで返事を待っていると云っておよこしになりました。それは私たちには分らないから、それでよろしいでしょう。Kは私たちから手紙を書くより前、お母さんが「もう一度働く気はないか」とおっしゃった由。そのときK留守であったそうで「では宮本様へ上って御都合を伺います」と云って来て、お母さんのお手紙の方には、折角かえれたのにすぐ商売をやめるというのも変だし、あんまり一人になるのもよしあし故、当分又やってゆくとのお話ですから、きっと好都合に行きましたのでしょう。それでようございました。それからKとしては、多賀ちゃんにそれから会いもせず音信もないから、そちらの気持が分らず、そのことについては何も云えないと云い、お母様としては勿論御反対です。光井の方では何だかちっとも深い心持のこととして扱っていないで、多賀ちゃんの気をまぎらそうとばかり考えている風です。二十日に上京いたしますって。やはり。多賀ちゃんはよろこんでいるし、お母さまも小母さまも皆賛成。但、それは多賀ちゃんの眼の上にあるホクロをとるという目的で。一ヵ月いる由。「気の楽な宿で治せて」云々と小母さま書いていらっしゃる。こういう無邪気さは笑うけれど腹も立つわね、正直なところ。多賀ちゃん自身の気持はまさかそれだけではないでしょうけれど。
多賀ちゃんの心持がどうか分らないが、こちらへもあまり長くいないのがいいでしょう。一ヵ月というのならば、それでよろしいでしょう。
お母さんは様々のことが重っていて、(事故の訴訟で四百五十円とか請求がある由)少し気分がくしゃくしゃしているが元気と云っておよこしになりました。それだから慰問袋をあげようと思ってね。何およろこびかしらといろいろ考えた末、福袋のようなものさしあげます。それをあけると、こまこました女のものの半エリや帯どめ、羽織ひも、腰ひも、いろんなものが出て来るようなそんなものを送ってあげようと思います。きっと気がお変りになっていいでしょう。それから恒例の海苔《のり》と。野原へはのりで御免を蒙ります。冨美ちゃんには何か可愛いものを考えてやりましょうけれども。
十四日には、十二月二日のつづきで出かけます。それから十五日はてっちゃんのところへよばれます。この前のがお流れだったので。十六日に又そちらへ行きましょう。やはり今月もあれこれと忙しい。婦人のためのものを一つ(二十枚ほど)。それから『文芸』の感想二つ。それから古典研究の叢書の別冊で現代文学篇が出ます(評論社)、そこへ今日(最近)の文学についての展望(四五年来の)五十―一〇〇をかきます。これは『文芸』に書いているものの本月書く分の先になってしまうけれども、婦人作家を主とせず全体としてかくから自分のためにもなり、一般のためにもなります。『文芸』のもつづけます。一杯一杯ね、今月はこれで。一月になってからは小説をゆっくりかきたいのです、あの、この間お話していた「三月の第三日曜日」を。これは本当にかきたい。たっぷりとね。「広場」はなかなかいい文句のところが消えてしまったので高い詩情というものが減っておしゅうございました。それでも消えない校正をくれましたが。例えば「ああ、われらいつの日にかその歌をうたわん」という声なき絶叫がある、朝子の感じる、そういうようなところね。非常に詩的[#「詩的」に傍点]なのに、ね。
文学の規模の狭小さというものに、多くのひとはどの位の苦しさを感じているでしょうか。この頃実にそのことを感じます。各自の文学のいかもの性と狭さ、低さについて。このことを自分に即して感じて切ないわ。ぐるりを見まわしてやはり猶切ないわ。文学について、まともなるものをどの位欲するでしょう。ギューギュー小さくても何でもそのまともなるものを自分でこしらえてゆくしかない。そう思います。イブセンがこう云っているって。「生れ持った才能以上の何ものかを芸術に与えるためには、才能以上の情熱或は苦悩がいる」という意味
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