pに現れた日支民族性という話をききに出かけました。所謂士大夫の教養としての文化、古典的文化、支那趣味として日本の諸賢に接触されている範囲の支那文化の特長と日本の文化の特長を対比的に話し、「芸術というものは決して大衆に判るもんじゃありませんよ」(日本語でこの通りに)と云われる考えでの話ですが、特質の或対比は、はっきりつかんでいてなかなか面白かった。支那の芸術は、すべて要素の複雑さ豊富さの融合渾然を愛し、総合的関係の間に生じる調和を愛すが、日本の人は簡素を愛し、一目瞭然を愛し、何にでも中心を見つけたがる。支那人にそれはない。茶も華も支那から来たものだが、それが日本に来ると茶道となり華道となる。道《ドー》がすき。そして形式化し、例えば茶道で茶わんを評価するのに五つの要点があってどうでもそれにかなわなければならない。本家の支那にそれがない。こまかい、いろいろのこと、面白かった。底の深さが。只古典的見地の基準で対比されているだけの話ですが。非常に内包するものの大さを感銘しました。そういう座談会で、日本の大家は、盆栽《ぼんさい》はどこが本家でしょうという問いを出し、人間生活には偶然ちがった場所で同じようなことが始められることはよくあって、そういう場合は、文献によるというが、文献が早く出来たところが本家というようになるので、云々。その問いも答えもやっぱり性格的で、なかなか見ものでした。この人の話は清朝どまりです。下村海南という御老人の老いても益《ますます》なるジャーナリストとしての注意力のあらわれ方を興味をもって眺めました。何か一寸した漫談随筆のトピックとなるような箇有名詞や画論など、或は書の筆法のことなどは、チャント万年筆出してノート出して書きつけている。やがて居睡り。「ところで支那の料理を例にひきますと、例えばフカのひれの料理」と云ったら、パッとして又ノートをとりあげました。実に面白いわね。パッとさせるコツを実によくつかんでいる。日本に永くいた人の由。日本の或種の人々の支那趣味というようなものをよくつかんでいる。実業家との接触が多いからですね。皮肉につかんでいます。
今、てっちゃんがよってくれました。呉々よろしくと。そしていつ頃行ったらよいかと。金曜日に伺いましょうね。石川千代松の本を面白くよんだ由。そうでしょう。勝海舟とこの人の父とは友達であり晩年の海舟は知っていた由。別の話ですが、明治文学について宮島新三郎さんの書いた本を一寸見たら、明治七年に日本で殆どはじめて明六社雑誌というのが出て、その同人に西周、加藤弘之、森有礼その他のうち、西村茂樹が加って居るのを見て面白く思いました。てっちゃんのお祖父さんという学者が佐倉藩に身をよせたとき、やはりこの茂樹がいろいろ世話をした由。孫が目白で顔をつき合わしてホウと云っているとは、いかな先生たちでも思い及ばぬところでしたろう。茂樹という人の顔は知りません。祖母の話で、女の繻珍《シチン》の丸帯をほどいて洋服のズボンにして着たとか、英語の字引を祖母も手つだって手写したとか、小判を腰につけて堀田の使いで不忍池の畔を歩いていたら、女の体では足が一歩一歩やっと出すような重さであったとか、土蔵にこもって上野の山の鉄砲の玉をさけていたら窓から流弾が入って、一人息子の一彰の背中にとまって、それを母である祖母がぬいてやったとか、いろいろの話。
おきまりの読書、その中で、南北戦争がイギリスの木綿製造の機械を改良させた速力のおそろしい勢であることが書かれて居ります。「風と共に」の作者はそういうことをどのように知っているでしょう。アメリカが一九二九年の恐慌から後、ヨーロッパ大戦以後持続していた繁昌を失って、文化の面でもその影響はつよく、人々は(アメリカの)失われた繁昌、くみかえられてゆく社会層の現実をまざまざと見せられるような作品をすきになれない(そういう意味ではセンチメンタリストであり、甘やかされた子供であるから)。そのためにアメリカ文学の現状は、現在のありように切りこんだ作品よりもミッチェルのような古い伝統の手法で、ごくあり来りの題材を描いたものが売れる。これは『文芸』に出ていたアメリカ人の評ですが、なかなか語るところをもって居ると思われます。
「我が家の楽園」というアメリカのアカデミー賞をもらった映画が日本にも来ています。原名は You can not take it with you で、金のことです。事業事業でやって来た男と、植物学をやっていたい息子、一種の変りもので切手を集めてその鑑定でくっている老人、その孫のタイピスト、いきさつは、人生の楽しさは金にはないということを云っているのですが、日本に来ると、これが優秀作かと思われる。死んで持って行かれやしまいし、と金について考える考えかたは日本に行きわたって
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