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 さて、今晩は。九日朝のお手紙けさつきました。疲れのこと、気をもまして(というよりもうすこしちがったもの、ね)すみませんでした。鎌倉のことは大笑いね。私が、改めて徹夜はしない云々と書くのは、いろいろ多いと「これは例外」と云って徹夜でもしやしまいか、こっそりやってるんだろう、とお思いになると思って改って書くので、他意なし、です。いそがしいからと云って夜ひる顛倒したら、一生涯きりがないことになってしまいますもの。どうにかやれているのも朝から昼間やっているからですもの。手のはれるのは、血圧の関係ナシです。私の血圧はいいのです、百二十幾つかですから。この間小説かいていたときも、朝から午後ずっとやって夜早く横になって、それでやり通しました。どうぞ御安心下さい。七、八と随分のばしていたものがあったからたたまったのです。十月、十一月へかけても相当ですが、やっぱり昼間仕事の原則でやりますから、どうぞ御安心。
 私はすこしバカね、考えてみると。何故あなたにつかれたことなんか書くのでしょうね。しかもそれが読まれて話題になる頃には、何時だって大体もうその状態はぬけているのに。何だか云ってみたいのね。云ってみたくて、云ってみては、結局大道的方針をあなたにくりかえさせているという形ですね。滑稽ね。妙な甘えかたね。これからは、おやめです。太郎が気をはって何か大いに大人ぶってやって、さて、ああちゃんの顔を見るとフニャフニャになる、まさかそれほどでもないけれども。ほんとうに、もう、疲れ話は一切おやめ、と。全くつかれない生活なんていうものはなく、それは過ぎてゆくものであり、而も根本的に疲れないように方針を立ててやっている以上、そんなこと話題にしなくてもいいわけですものね、その事自体はね。私の「疲れた」はもっと心理的発言なのですね。だから、その証拠に、薬は、早ねしたか、と云われることにないのだから、微妙さお分りのことと存じます。今まで自身心づかなかったことでしたが、何だか、きょうは分りました。しかし、あなたもいくらかは分っていらしたかしら? 十日におめにかかったとき、この手紙の内容につき、「いや早起きをショウレイした手紙だがね」と云って笑っていらして、そこにニュアンスがあったから。きっとそうでしょうね。そのニュアンス思い出す方が、つかれ癒る感じだから、そうなのでしょう。
 夏ぶとん届きました、白い
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