烽フです。隆ちゃんのは、いつも本当に簡単。便箋一枚。でもふれるところへはみなふれて、気持がわかりますから、心持よい手紙です。すぐ返事をやりましょう、これのつづきに書いて。では又明日。きょうは暑いけれど昨日のようにむしませんね。よくおやすみ下さい。
六月二十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
六月二十一日 第五十三信
そうかしら、四信ではないかしら。
それでもすこしはゆったりしたところならいくらかましでしょうとこちらの息もやや楽な感じです。かえったら南江堂の本届いて居ましたから着物と二包速達しました。今度の紺ガスリとある方は、本当にひとにお会いになるとき用です。今ねまきになすった方は、どうでもようございますが。紺ガスリ例によってそちらの洗濯にお出しにならないよう。お送り下さい。
きのうは、かえってからマツがなかなかアクティヴなので、すっかり夜具干しして、風呂敷につつんでしまって、きょうはマツ縫いなおす分のほどきものをして居ります。夜具がしめっぽくなりそうなまま戸棚につくねてあったりすると気になってしかたがなかったからいい心持です。でも痛し痒しで私は苦笑している、というわけは、マツは二日ばかりここへ来て大掃除手つだって上げてと云われて来ているので、活気溢らしていて、些か私の方がつかわれている工合です。私は布団もほしたいが、すこし落付いて書きたいものもあるわけなのですから。いろいろと滑稽ですね。でも、今快晴がつづくのは助ります。もうすこし経つと咲枝パンクで入院ですから人手たりなくなるし、私が留守いをしてやらなければならなくなるから。予定日は九日だそうです。咲は、太郎のためのみならず、ちゃんとした人がいてほしいのです。それがよくわかるし、ほかならぬお産のことですから、私も我マンしていてやります。国男はお産のときそばについていてやれないのですって。そわそわしてお酒のんで、ちっとも酔わないで、ウロウロしているのですって。全く古風です。お産をするおかみさんの手を握っていてやれないなんて、ね。
この間、法政の新聞に『ミケルアンジェロ』のブックレビューをかきました。そしたら五郎氏からミケルアンジェロの「奴隷」のエハガキに細々とかいたお礼頂きました。ノートとっては勉強する人の字はこんなにこまかく書く癖がついているのでしょうか、蠅の目玉よ。
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