座敷のすぐとなりの売った地面に製材所が建ちかかっている由。前の鶏舎に朝鮮の人がうんとつまって住んでいる由。台所、事務所のあたりを人にかして、そこには別の一家が住んでいる由。野原もひどい変りようと想像されます。春の魚であるめばるもそんなものを釣っているよりは「稼いだ金で魚買うた方がやすくつく」そうで、めばる売りも来ません。東京の生活の気分と全然ちがう。一体この辺が、何か、目前の金の出入りに気をとられ、何か気分が変っている。躍進地帯ですから。じっくりした気がかけている。人と人との間の空気にそれが及ぼして居ります。ガソリン、タイヤ等、うちは出征家族ですから特別の便宜があって不自由して居りませんそうです。トラックの仕事はありすぎる位の由です。
岩本さんの返事あり次第、私はなるたけ早くお母さんをおつれしてかえりたいと思って居ます。おちついて本をよむということも出来ず、何かそちらの机が恋しい。二十一日に隆ちゃんが出発したら四五日に立ちとうございます。お母さん東京にいらっしゃるならばゆっくりいて頂いていいから。早くかえったって同じですから。(私がこちらを)
私は大変、大変、かわきです。かえって、一週間もおひとり占めにされては決してしわいことを云うのではないけれども、辛いところもある。どうぞよろしく願います。風邪はまだすっかりはよくなりませんが大丈夫ですから御心配なく。
きのうは随分ひどく歩いて疲れて、きょうは顔まで腫《はれ》ぼったい程ですがそれでもおなかはケロリとしていて大助りです。
あなたはずっと調子同じでいらっしゃるでしょうか。十五日に書いて下さいましたろうか? 隆ちゃんにはおことづけよくつたえました。達ちゃんがお母さん宛の手紙のなかで、子どものうちからあなたと離れて暮すことが多かったが、当地へ来てから初めて兄さんの頼りになることが身にしみてわかった、博識であることに敬服したというようなことがありました。これは実に大きい収穫であり、博識云々はともかく、頼りになるという感じは人間生活の通り一遍のことでは(相互的に)会得されないものですから、私はまことに感深くよみました。そこには、達ちゃんとしての生活に対する心持の成長が語られているわけですから。私はうれしいと感じてよみました。これまで屡※[#二の字点、1−2−22]《しばしば》私が来て見て感じていたことから見れば、この進
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