「でしょう。そしてあなたの名をかいた箸でたべて十分お祝いしていいわけでしょう?
二十八日までにつくよう速達にいたします。どうか呉々お大切に。私の方は安心して頂いて大丈夫です、この分ならば。ではいい年を迎えましょう、寿江子や林町へ下った手紙、きのうお土産[#「お土産」に傍点]に見せてくれました、この枕の横にあります、皆はずるいから、こういうものをもって来さえすれば大きい顔をしているの。
十二月三十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 慶応大学病院より(封書)〕
第八十六信 きょうは初めて椅子にかけて昼飯をたべようとしておき出したところ、二十三日、二十六日、二十八日づけのお手紙をどうもありがとうございました。机のところに置いてちょいちょい飴でもしゃぶるようにとり出してよんで居りました。
この手紙着くのはお正月の一番はじめの分でしょうが、やっぱりおめでとうは早すぎる気がしてまだ書けず。
二十八日には惜しいことでした。寿江子がすっかり容態書をかいて用事をかいて出かけたのですが、十二時すこしすぎそちらへ着きました。そしたら二十八日は午前十一時までだったの。それを気付かず、二十八日をと日ばかり一心に見て来ていたものだから駄目。失敗しちゃったと悄気てかえって来たので、私もがっかりしたし、一番終りの日様子もわからず歳越しをおさせするのはどうも辛抱出来なかったので、もう一遍行って貰い、特別に面会を許可されるよう願いましたがやはりもう人手がなくて駄目で、様子だけはつたえて下さるとのことで書いておいて来たそうです。わかりましたろうか、本当にわるかった。きっと待っていらしたに相違ないのですから。
二十六日に化膿しかけているのではないかという心配がありましたが、二十八日傷からしみ出しているのが漿液《しょうえき》とわかり、糸を切ってその水をよくとったらば熱もすっかり下り二十九日は一日六度台(朝6度夜八時六・九)、きょうは朝五・九で今六・一です。大体はじめから熱は低かった。そして傷の癒着も大層よくて今では三センチに足りぬ(一寸に足りぬ)傷口が殆んどすっかりついていて、下の方にはじめからあけてあるところ(手術のとき細いガーゼを入れておいたところ)が小さくあって、そこから漿液をしみ出させている工合です。お医者様もいろいろで、モテギさんは傷を大きくつけて平気な方。私のおなかを切った木村博士は人間の
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