品切ですが、二十日ほどたつと改版ができますからそれを入れましょう。
小学校のラジオで私はこの好季節をヒステリーになったから、目下しきりに家さがし中です、近所で。近々又おめにかかります。
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[自注6]倉知の叔父――偶然同じ日に書いたこの二枚つづきのハガキが、この家から百合子が書いた最終のたよりになった。[#実際は五月十日付が最終のたより]倉知の叔父――咲枝の父。
[#ここで字下げ終わり]
五月十日朝 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 上落合より(山下新太郎筆「海棠」の絵はがき)〕
五月十日、第十三信の副。
五月三日におめにかかってかえりましたら、午後四時すぎに倉知の叔父が六十九歳で死去いたしました。私はいそがしいので儀式だけですまそうとしたが、親身なため心持もすまず三日ばかりすっかりそのために時をつぶしました。緑郎が一番可哀想です。咲枝は太郎の乳がとまるといけないと思ってしっかりしていたから感心でした。
腹まきはやはり家にあってまだお送りしてなかったので至急送り出しました。私はひどいセキで吸入をしたりキンカンの汁をのんで居ります。
底本:「宮本百合子全集 第十九巻」新日本出版社
1979(昭和54)年2月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
※初出情報は、「獄中への手紙 一九四五年(昭和二十)」のファイル末に、一括して記載します。
※各手紙の冒頭の日付は、底本ではゴシック体で組まれています。
※底本巻末の注の内、宮本百合子自身が「十二年の手紙」(筑摩書房)編集時に付けたもの、もしくは手紙自体につけたものを「自注」として、通し番号を付して入力しました。
※「自注」は、それぞれの手紙の後に、2字下げで組み入れました。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:柴田卓治
校正:花田泰治郎
2004年7月30日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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