つれ出そうとしたのですって。それどころでなく、夜はお魚のスープをこしらえて御飯をスーさん、栄さんとりまぜ四人でたべ、丁度送って来た『文学評論』などよみ、いろいろ話し、十二時頃になった。
 行って送ってあげようと云っているうち、私はきょうの用事を思い出しついでに一つふろ敷包みをこしらえてそのまま林町へ来ました。配膳室のドアをわざとコトコト叩いたら、内の連中は時間が時間だし何が来たのかと一どきにこっちを見ている。そこへ私が現れたというわけ。
 けさは、二階に眠っていた父(私の来たのを知らないから)がおきたのをききつけて、洗面所でバシャバシャやっているうしろからいきなりびっくりさせ、それから電話を一つたのんで、又こんどは二階のおやじさんの空巣へもぐり込んで例によってお眠りブー子をやって、おきて来たら、すぐ私のいつも坐るところのテーブルに、あなたからのお手紙(父宛に、三月十四日にお書きになった分)がのっていた。封が切ってある。父が読んで私の目につくところにわざと置いて出かけたのでした。家じゅうのものがよみ、特に咲枝は太郎の生後百日目の食い初め[#「食い初め」に傍点]のお祝い日であったのでうれし
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