インの男が帰国する船へかけつけると、当の対手は敵役に決闘をしかけられ既に瀕死。クリスチナに介抱されつつ死ぬ。クリスチナは夫が二人で住もうと云った崖の上の家へ住むために船出するところで終り。ガルボは、いい女優の特長として幅があるし、流動的だし、含蓄があるし、私は好きな女ですが、この平凡で謂わばセンチメンタルな映画を見て、私はどっち道不幸なめぐり合わせを描写して涙をこぼさせるようなのは、すきでないと感じました。この私の心持から或一つの話を思い出します。大変裕福に、大変愛され、何不自由なく育って多分高等学校にいるある家の息子が、そのおかあさんに、母様何故活動なんかが好きなんだろう。ひとの不幸や悲劇や、そんないやなものをわざわざ見てどこが面白いの、と云ったのだって。
お母さんは 私閉口しちゃったけれど、やっぱり観に行くわ、と楽しそうに忍び笑いをして、デモ、もうあの先生は誘わないの、と私に云いました。その話を思い出した。これは私がいやだというのとはちがうのですけれどもね。今の世の中に、そういう心持の青年も生きているというのが私に印象つよいわけです。
そう云えば『白堊紀』がそろって手に入りまし
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