心持でポストをあけて居ります。
追伸。お下げになった夏の着物は三日ばかり前につきました。
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[自注2]鶴さん――窪川鶴次郎。
[自注3]咲枝――百合子の弟の妻。
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二月十七日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 上落合より(封書)〕
第七信 二月七日の夜からはじまる。木曜日。下弦の月。さむし。
こんばんは。今、女の生活のことについての二十枚近いものを書き終り、タバコを一服というような、しかし心の中にはまださまざまの感想が動いているという状態で此を書きます。すこしくたびれた。今、口をきく対手がない。だから、これを書きます。昨日は今年の中で一番寒い日でしたそうです。品川沖へ海苔とりに出たお爺さん漁師がモーターが凍ったところへいろいろ網にひっかかったりして不幸にも凍死したという話があります。私はゆうべも仕事をしていたがあまり寒いので寝てしまいました。寝ながら、さむいといってもここには火鉢があるということを非常にはっきり感じました。あなたは霜やけにおなりになりませんか? 足の指に出来ていませんかしら。よくこすることです。塩をつけてこするといい
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