[#「しん」に傍点]からたのしんで仕事する味を味わって居ります。
一昨日は、この十日に生れた太郎[自注23]が、産院から林町へかえるので夕方から出かけました。お祖父さんのうれしがりようは全くお目にかけたいほどです。国男も伜《せがれ》の顔を一日に一度見ないと気がすまないと云って、そわそわしていますし、スエ子もうれしそうだし、私は皆がそうやってよろこんでいるのが又大変愉快です。私はこれまで父が気の毒であったのが、ほっとしたようです。父は深く母を愛していた。そのことは私の想像以上のことでした。だんだんそれが分って、しかもしん[#「しん」に傍点]からそれのわかるのは様々の意味で私一人であり、けれども父のおもりをして国府津にくらすことは不可能ですし、大乗的に行動して家も別にしたのでしたが、太郎はよい折に生れました。この太郎という名、ヌーとしていて男の児らしくていいでしょう? 姓と一緒によぶと相当なものになりそうでしょう? これは家族会議(?)できめた名で、主として私の案です。女の児なら泰子というはずでした。この頃、仕事に興じて大体机に向って一日を暮しているのですが、この間いねちゃんがきて、もう
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