続々と到着して来る。そんな情景も、日本の新しい時代の姿であると思う。
それらの子供たちが、一年東京に働いた後に健康を害する率の多いことは、既に一般から重大な関心をもって視られているし、工場や雇われ先での明け暮れに稚い若い心の糧の欠乏していることの害悪も、やはり人々を憂えさせている事実である。
昭和十四年には、その春小学校を卒業した子供たちの三九パーセントがそれぞれ就職している。九十二万五千九百五十五人という少年少女が、労働の給源となった。それでさえ、求人の四割を充しただけで、公の職業紹介によらない斡旋屋は、小学生一人について三十円の手数料さえむさぼったと記録されている。
八年制の国民学校を卒業した少年少女たちは、やっぱりそのようにして勤労の生活に入ってゆくのであろうが、その需要に即してみれば、六年を終っただけの子供より働く少年少女としての肉体と精神との能力は、余程高められているわけになるのは明白である。使う人はその高められた能力を一杯につかうだろう。
小学校を出たばかりの子供と、高等科を終った子供とでは今日貰っている給料がちがう。国民学校を卒業して就職する何十万かの少年少女は、
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