下にあって、せっせと「千人縫い」をやって支配階級の大量的殺人を援助し、ストライキを逃げ、階級意識を眠らす出征兵士慰問金をかき集める役をつとめるとしたら、果してわれわれは何事をなし得るであろうか!
地方の農村・小都市で封建性は強く日常生活の些細な感情の中にまで残っている。一般の世界情勢につれて、革命化しつつあるとはいえ婦人大衆は企業内にあるとないとにかかわらず四方八方から反動文化にからみつかれる危険にさらされているのだ。
日本プロレタリア作家同盟の各地方支部は全国にわたるプロレタリア文化・文学運動の名誉ある階級的文化派遣軍だ。任務は地方の特殊性に応じて反動文化と闘い階級的芸術を創造することだ。このことの中に、階級の半身としてある婦人大衆の文化水準を高め、日に日に高まる闘争とともに独得な芸術作品を創造させて行くための努力が、プロレタリア文化活動本来の性質として既に予定されているのだ。
一九三二年の国際婦人デーの記念として、日本プロレタリア作家同盟の各地方支部はめいめいの執行機関の下に婦人委員会を置く問題を具体的課題としてとりあげなければならない。
各支部の中央執行機関はその一つの機能として婦人委員会を置き組織部、教育部等を刺戟し婦人同盟員の獲得を、真剣に階級的任務として考慮しなければならない。
婦人同盟員の自己教育、同伴者的婦人作家の獲得、特に婦人に関係ある種々なカンパへの組織的動員等はすべて婦人委員会の活動に属する。一人の婦人通信員は、めいめい一人ずつの婦人通信員をこしらえよう!
各支部が指導する文学サークルに、現在婦人サークル員は何人いるか、国際婦人デーを機会として、各支部は特にその地方の種々な企業の中にある婦人大衆を精力的に文学サークル、或いは文化サークルに組織しなければならぬ。そしてサークルから段々婦人の文化・文学的働き手を養成しなければならない。
既に出来ているサークルで、そこには婦人サークル員がまだ参加していないところでも、国際婦人デーの記念の座談会・懇談会は必ず持たなければならぬ。その席上で、支配階級のファッショ化、帝国主義戦争とたたかうプロレタリア・農民の闘争の具体的一部としての国際婦人デーの意義、ソヴェト同盟をわれわれは何故支持するかということも、われわれの日常の闘争と結びつけて説明されなければならぬ。一人一人のサークル員が婦人サークル員増大の階級的価値を会得し、その獲得のために行動するよう、サークルの責任者は話をすすめて行かなければならないのだ。
『文学新聞』『働く婦人』(三月号は特輯で附録に「文化サークルの話」という有益な別冊がついている)などが、この活動のために十分利用されるだろう。
処女会、御用反動雑誌の読書会等の影響から一人でも多く婦人大衆を引きはなし、プロレタリア文化・文学運動の影響下におくことは、この階級闘争の切迫した時機、一刻もなおざりにされ得ない仕事なのだ。
出征兵士の相当ある地方では、出征兵士の家族の若い婦人たちを茶話会、或いはその他の形であつめ、ブルジョアのバラまく戦争へのアジ、例えば桜井忠温の「銃剣は耕す」などという軍事通信の曝露をやり、次第にサークルへ組織して行くようなことも考えられる。
これらの仕事は、即刻各支部によって活溌に着手されなければならない。三月八日の国際婦人デー一日だけを目標とせず、この歴史的な一九三二年の国際婦人デーを記念として、われわれの決定的勝利の日まで、高まり高まり行く階級的文化闘争の積極的拡大の宣言として永続的に着手されなければならないのだ。[#地付き]〔一九三二年二月〕
底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
1952(昭和27)年8月発行
初出:日本プロレタリア作家同盟中央常任委員会及び同婦人委員会共同署名のビラ
1932(昭和7)年2月
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月26日作成
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