豪華版
宮本百合子

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 どんな作家でも、自分の書く本が立派にこしらえられ、そして見事に売れることをよろこびとする。しかし、その自然なこころもちは、時代のいろいろの関係で、あながち、芸術的に発露されにくい。何しろ、出版企業というものに結びついているのだから。
 文学を愛し、文学をつくる人になる前に生活の必要と文学愛好の心からジャーナリズム関係に入る若い人は、みんな大抵幻滅を経験する。バルザックの「幻滅」とはちがった意味で。遠くから見て敬意を抱いていた芸術家たちが、ジャーナリストとして接触してゆくと、その人々のジャーナリズムへの態度が露呈され、人間的にも幻滅し文学的にも別な目をさまされる。そして悲しいことに、一種の文化的すれからしとなってしまう。「まんじ」が一冊千円ということは、幾人かの人から幾たびかきいた。「まんじ」が千円ということは、今の出版にある一種の傾向か
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