由である。けれども、川端康成が三月号の『文学界』に発表している「天授の子」をよめば、現代の文学者が、その理性と人間的な感覚とを日本人の運命とその文学の運命とについて、どのように働かせはじめているかということは明瞭である。世界平和のために戦争挑発とたたかい、戦争に誘いそれを暗示する思想と言論のカナライゼーションに抗してわれわれ自身を恥辱から救おうとする決意と行動は、こんにち、フランスの抵抗(レジスタンス)をまねる範囲をぬけている。一九五〇年は、日本の理性が試練される年である。このきびしくて人間らしい美しい事実はすでにわれわれの前にあらわれている。
河盛好蔵がこんにちのジャーナリズムの有様を「小説病時代」と云った。そしてひろい同感をひきおこしている。巨大資本にしたがえられた商業ジャーナリズム・商品文学の氾濫を批判してすべての作家たちと読者とは、「小説病」は防がれ治癒されなければならないと考えている。そのための必要な文学行動はとりもなおさずジャーナリズムを支配しようとしているのと本質においてはひとしい巨大資本による挑発とたたかって理性を防衛する行動であるという実質を理解して来ている。生物
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