といわれるその女がとりもなおさず母だということは、何と面白いことだろう。女性は母であるという事実が一人一人の女性にしんから実感されるならば、女性がこの社会に働きかけてゆく活溌さは、もっともっと横溢的であっていいと思う。
 きょうの若い女性たちが、明日は立派な乳房とつよい腕と年毎に智慧の深まるしっかり優しいまなざしを持つ母たちであろうとするならば、それらの女性が自分たちとその子のために、社会に必要なあらゆる施設を、それが住宅と産院であるにしろ、托児所や子供公園であるにしろ、食堂であり、洗濯所であるにしろ、自分たち女性のもの、つまりは息子や娘たちのものとして、一つでも多く持てるように骨折っていいのだと思う。
 母たる義務が示している権利によって、女性と子供の生活の事情があらゆる職能の場面で大切にされ、理にかなった扱われかたをするようにして行かなければならない。
 そしてこれらの現実のいとなみが、いろいろの事情からそうやすやすと実現しにくいことを決して知らなくはない今日の女性たちであるならば、母という生の道でへてゆく日々に、その伴侶である男性との間の理解、共感、協力がどんなに大きい影響をもっ
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