マルシャルに求める。マルシャルはそれを拒絶する、ジュヌヴィエヴには自分のいっていることの真の意味がまだわかっていないのだ、と。
 題が語っているとおりに、この小説は未完であって、ジュヌヴィエヴがついにどんな発展をたどって、求めている女性のより広く自然な生きかたをえて行ったかというところまでテーマは展開されていない。作者は十九歳になったときのジュヌヴィエヴの回想として、そういう形での抗議が真の抗議の意味をもたないということを語らせているし、同時に彼女の親友ジゼルの批判として、子供だけもって結婚はしないというような「女にとってあとあとの負担の非常に多いそんなやりかたを承知するような男を、どうして尊敬できるでしょう?」ともいわせている。
 大変いわゆるお育ちのいい十六のジュヌヴィエヴが女性としての目ざめとともに、自分たちをとりかこむ綺麗ごとと表面の純潔でぬりあげた環境への反逆として、そういう観念の上での破壊を考えたことは分るとして、日本の、それも現実の波に洗われながら働いている若い女性たち、日本の社会が、良人なしに子供をもった若い女をどんな眼で見て、その子をどう扱って来ているかということを痛
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