入院中の夜の娘たちを訪問して座談会をしている。よこずわりの娘たちは某作家から、あなたがたは第一線の花形です、とたたえられている。せめて毒のない花になってほしい、とはげまされている。それに答える娘たちの物語は、片仮名を二つかさねた名でよばれるこれらの娘たちの生活が、どんな現実をもっているかということを赤裸々に告げた。第一、彼女たちは、めいめいがはったりでいっているほどの金を儲けてはいない。第二に、決して自由気ままな生活ではなくて、その病院へ入れられるときも、お湯のかえりをそのままつれて来られたり、台所からつれて来られたりしている。そして、第三に、よむものの心をうつことは、商業的な文化の上では猟奇のヒロインのように描き出される彼女たちが、電車にのると、パン助野郎、歩いて行け、とののしられたりするということである。娘たちは、真赤にルージュをぬった唇から、なるたけ歩くようにはしているけれど、わたしたちだって遠いところは乗りたいんです、と訴えている。
売笑婦が、電車に乗るのは生意気だといってののしられる国が、日本のほかのどこにあるだろう。なるたけ歩くけれど、遠いところは乗りたいという、いじらし
前へ
次へ
全20ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング