鬼畜の言葉
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)はしご[#「はしご」に傍点]で人がなかへ降りてゆく
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メーデーからはじまって、五月は国民一般の祝日の多い月だった。憲法記念祭、子供の日、母の日。どれをとっても、それぞれに新しい日本に生きるよろこびとはげましと慰藉とを意味しないものはなかった。そしてそれらすべての心がめざすところは、世界の平和であった。四月末の、政府のきめた婦人週間にしろ、ことしは、はっきりと百数十万の日本の未亡人の問題がとりあげられた。そして、ここにも希望されたのは平和であり、生きてゆく人の命の尊さとその運命に対するまじめな相互責任についての考え直しであった。子供の日にちなんで、五月二日の朝日新聞「天声人語」に「ケティを救え」の物語がのっていた。四月八日の午後、カリフォルニア州サン・マリノ町であき地に遊んでいたケティという三つの女の児が、草むらにかくれていた古井戸へおっこちた。サン・マリノのその古井戸は、日本の古井戸のようにはしご[#「はしご」に傍点]で人がなかへ降りてゆくことはでき
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