業者と美術家の覚醒を促す
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)洵《まこと》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一見|洵《まこと》に豪華なものである。

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九三六年六月〕
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 最近豪華版とか、限定版とか称する書籍を見る。少い部数で、一々本の番号を付し、非常に立派な装幀で、一見|洵《まこと》に豪華なものである。限られた少数の富裕な見手を目当てにしたものだろう。私達から見れば此上なく意味のないもので、読んで見て魂消る場合が屡々ある。内容と形式とが全然一致しないのである。何々文庫と称する十銭二十銭のものにどれだけ劣るか分らない。
 見た眼がいいものを――という気持の出版当事者も悪いが、又装幀を引受けた美術家なるものもあまりに盲目的である。芸術的良心を痲痺させてしまって出版業者に動員されて、てんから恥ない所がありはすまいか、出版当事者美術家ともに大いに良心を覚醒させる要があろう。
 次にさしずめ世界文化年表とでも称する年表が欲しい。広い文化の分野でせまい分科的
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