められ、物価高に苦しめられ、やっと子供を教育しようと思っている母親に、今日の新聞(二月二十一日読売)の文相高瀬荘太郎の話はなんとひびいたでしょう。文相は、父兄からのつけとどけのない大学教授たちの生活難について語り、私立学校の入学にからむ父兄からのつけとどけを、やむを得ないことだと語っています。これには漫画家の近藤日出造氏もあきれています。そうとまでは知らず、こういうありがたい文相をこしらえるような投票をした幾人かのお母さんは、今日このごろの新学期をひかえて、人にいえない苦労をかさねているかも知れません。こういうひとつひとつのことのうちに、私たち婦人がはっきりと態度をきめてたたかってゆかねばならぬものがあります。私たちの平和の主張も、ファシズムに対する闘いも、いつも大きい形であらわれてくるとばかりはきまっていません。
 婦人こそ幸福を求めています。私たちが、私たちを不幸とするものと闘って、幸福をかち得てゆかねばならないこともわかってきています。今年の三月八日は、例年にもまして、日本の婦人が人民の立場で、すべての不幸の源であるさまざまの形のファシズム、労働法改悪、大量のくび切りなどに対して闘ってゆく決心を新らしくする日だと思います。
 この目的のためには、職場の婦人、家庭の婦人、婦人労働者、知識婦人の間にこれまであったそれぞれの立場にこだわった感情がすてられて、人民としての婦人というただ一つの強力な意識にとけ合うべきときです。[#地付き]〔一九四九年二月〕



底本:「宮本百合子全集 第十五巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年5月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
   1952(昭和27)年1月発行
初出:「アカハタ・ウィークリー」
   1949(昭和24)年2月28日号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年6月4日作成
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