おいてある。この唐獅子は、その女のひととつき合のある幾軒もの家にあるのだろうと思うが、牡の方はその口をわんぐりと開いていることで見わけるのだそうだ。ところがこうやってしげしげその顔を眺めていると、豪魁そうに舌まで見せて口をかっと開いている牡の方が人のいい親爺に感じられ、却って口をつむんで傍にひかえている牝の表情に、ひとくせ籠ったものがある。じっと見ていると笑えて来る。
やすくて生のいい花をうる店が近所にあったらどんなに嬉しいだろうと思っている。
[#地付き]〔一九三九年十二月〕
底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
1981(昭和56)年3月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
1953(昭和28)年1月発行
初出:「新潮」
1939(昭和14)年12月号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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