願いのほかにありません。戦争で破壊された世の中を、ましなところに立て直すには平和しかないことは、誰にもわかってきていることです。
せっかく平和に戦後の生活を建設しようと努力している世界の人々を、強大な破壊力をもった新兵器をつくり出して、気にいらなければいつでもそれをぶっ放すぞという風におどかしている者があるとすれば、そのような狂気こそ世界の人類の理性の力で、とりしずめなければなりません。ソヴェト同盟とアメリカが世界平和のためにより近づいて協力しようとしているこんにち、国内でひそかに戦争を挑発しているものがあれば、それこそ平和の敵です。ストックホルムで開かれた世界平和擁護大会が、原子兵器禁止の決議を行い、ヒロシマとナガサキの恐ろしい経験をもっている日本の人民が、このアッピールの先頭にたつだろうと期待しているのは当然です。戦争は宿命ではありません。人間がおこすものです――しかも自分では決して死なない一握りの人たちが――。したがって、より多数の人間の努力で戦争はやめられます。原子兵器も人間がつくりました。それを使う使わないは世界の人類の判断と意志によります。
原子兵器は禁止され、原子兵器を管理する国際的な委員会が確立されなければなりません。そして、これからどの国に対してもはじめに原子兵器を使う政府は、人類に対する戦争犯罪人として扱われるべきです。わたしたち世界の婦人こそ先頭にたって原子兵器の脅威という現代の悪夢を追いはらいましょう。[#地付き]〔一九五〇年八月〕
底本:「宮本百合子全集 第十五巻」新日本出版社
1980(昭和55)年5月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
1952(昭和27)年1月発行
初出:「村と共済」創刊一周年記念号
1950(昭和25)年8月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年6月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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