寒の梅
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)腹帯《ふくたい》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)シャ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ンヌの絵
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一月○日
朝飯をたべて、暫く休んで、入浴してかえって横になっていると、傷の写真をとりますから腹帯《ふくたい》はあとになすって下さいということだ。やがて、白い上っぱりを着た写真師が助手をつれて入って来て、ベッドに仰むきに臥ている自分の右側のおなかの傷に向って高いところからアングルをとって写してゆく。もういいのかと思ったら富田さんがいそいで来て、木村先生が御自分でいらっしゃってからおとりになるんだそうですからと云うことだ。若い写真師は廊下で待ちどおしそうにしている。木村先生がひとりで来られ、写真師もまた入って来た。木村先生は粉はないか、何でもいいととりよせた白いこなを傷のところにかけ、この辺からこうずーっと入るようにと指図して、傷に添って小さい物尺をおなかの上に置いた。ホウ、一センチ七ばか
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