ものを具体的に解決しようとして行動しているのだと、それを禁じ、法律によって裁判することの自己矛盾に気づかれるでしょうか。やはりその人々は親子関係における基本的人権についての理解は古いままで、親の方だけ切離して社会問題に取上げて判定されたような分裂が起ってきやしないか。つまりこういうような殺人事件、詐欺とか強盗、そういう事件では社会の責任を指摘するでしょう。しかし、社会問題そのものを解決して行こうとする社会的行動に対する鎮圧とか、抑圧とかいうものについては、やはり分裂したいままでの考え方をもって法律をお使いになるのじゃないでしょうか。
 今日私どもが基本的人権についていう場合には第一、戦争の犯罪性ののこりとして、それで「殺す」ということについての人間感覚がにぶっているということ。同時に浦和充子の事件その他たくさんの社会問題的な事件の本当に基本的人権を重んじた解決の方法というものは、その原因の一つとなる社会事情改善のための社会的行動そのものについて、基本的人権の擁護が実行されなければならないという点をおとすことができません。この事件にもどって申しますと、私には浦和充子という人の犯罪の動機、
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