人権が尊重されなければならないという問題は、さっきからときどき繰返されましたが、その面では、判検事とも非常にしきたりの古い考え方で扱われている。子供を卑族と見ています。
 この事件に関係した判検事ばかりでなく、一般にまだ日本の人にある基本的人権尊重ということの裏返しのような現われ方を、私どもはこの際に考えて見なければいけないと思います。なぜならば、親子関係の理解の非民主的な点は皆さんよく御注目になっている。私もそれは同感なんです。大体殺すということ、それに対していまのわれわれの神経はどんなになっているかというと、これが基本的人権の一番基礎の問題として疑問を感じるのです。私ども日本人は戦の最中、ずっと死ぬということについて世界で独特の感覚をもっていました。今は死ぬということについては、主体的に自分から死ぬということについては、違った考え方をもつことになったかもしれないが、殺すということについては戦争中の殺すことに平気な傾向を皆もっています。戦争は殺すということについて英雄心をもたせ、優越感を与えてきた。殺人を権力が正当化しました。戦の罪悪は、戦がその戦場でやった非人道的なことのほかに、こ
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