予にしたとあります。身許引受人というものと、その充子さんという人との関係がわかっていないし、夫とその人との関係がわかっていません。ああいう生活過程をもっている女の人の場合には、ひとくちに身許引受人といってもいろいろのことが考えられるわけです。そういう点もプリントではわからない。
 そこで判事や検事は、事件を社会問題としての面で強調して、生活苦ということを主張なさったわけです。けれども、どなたかふれられたように本人は生活苦じゃないといっているんです。そうすれば、あの殺した動機というのは、率直に申しますとつまりやけっぱちになった、つらあてという感情が非常に強く支配したんじゃないかと思うんです。つまりお酒を飲んで悪口をいうとか、悪態を吐くとか、ええこん畜生と思ったことを亭主につらあて、社会につらあて、人生に対する反抗心のすべてをああいう行動で表現してしまったんじゃないかということをやっぱり思えるんです。事件そのものとすれば、勿論戦争から惹き起されたことであり、『読売』の方がおっしゃったようにいくらでもある事件でしょうけれども、やっぱりこの事件にはこの人の性格というものが作用しており、それから
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