某日。
 オペラの「蝶々夫人」を今日の日本人が見て、非現実的に感じるのは自然である。近衛秀麿氏が今度それを改作する由、お蝶夫人が歌手で、ピンカートンである音楽家が京都へ演奏旅行をして、最後は、お蝶がヨーロッパへ演奏に行ってその音楽家と出会いハッピーエンドになるように改作するのだそうである。映画はこの筋を既につかい古している。しかも音楽の初めの部分だけを[#「初めの部分だけを」に傍点]近衛氏自作に変更するのだそうだ。兄もよろこぶだろうと、この芸術的プラン[#「芸術的プラン」に傍点]をよろこんでいるのは、素朴である。こういうことを考えついたり、貴族院議員をやめたり、兄が兄がと亢奮して気の毒である。
[#地付き]〔一九三七年七月〕



底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年3月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
初出:「輝ク」
   1937(昭和12)年7月17日号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月15日作成
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