の中でつとめの行きかえりに読まれるのかもしれない。
 第一話から第五話まで、コフマンは太陽と七つの惑星、そのなかの一つである地球、その地球のまわりの空気などについて語っている。宇宙の偉大さを感じさせるこの部分は、私たちに岩波文庫に出ている「史的に見たる科学的宇宙観の変遷」(寺田寅彦訳)を思いおこさせる。人類が宇宙へおどろきと好奇の心を向けて以来、その宇宙観察はどんなに推移して来ているかがこの本には述べられている。星と星との距離の測定についても、祖先たちは観測の条件の素朴さからさまざまの間違いもした。コフマンがその成果に立って示している数字が私たちの記憶の基礎にあって初めて、昔の人の示した数字にある面白い誤りも生々と私たちに今日までの研究の意義を知らせるだろう。宇宙への認識は現代次第次第に拡大されますますリアルなものとなって来ている。「膨脹する宇宙」という本は、私の読んだことのない本だが、やはりその推移を描いているのだろう。文学としてのギリシャ神話は宇宙の壮大と美麗と威力とへの関心を当時の都市の形成を反映している神とその人間ぽい生活感情で形象していて面白い。イギリスの十九世紀初頭の詩人画
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