た」というのである。総辞職を求めて来た四党代表に向って、首相が自由にものをいったら、そして、その場での誠意を表明しようとしたら、彼は、国を憂えているという自身の心を証明するために、更にどう話をつづけたであろうか。楢橋氏の「ストップ」令は、何をストップさせたのであったろうか。バルザックの小説の場面が髣髴《ほうふつ》される。仮に、首相が楢橋氏の進言に従って三菱の婿としての立場を考え直す、ということで、国を憂える真意を裏づけようとでもしたら、政府は、目下試みているような憲法草案を仮名まじり文にしただけの押しつけや、労働法の骨抜き作業などをつづけることは全く不可能であり、東京だけで五万人の失業者の群をつっ切って政権争奪の自動車を駆らせていることは出来ないことになって来るのである。
 このようにあくどい動きのある側らで、三十数名の婦人代議士たちは二十五日に女ばかり集って、市川房枝女史の世話役で婦人代議士のクラブを作り「女は女で」やろうとしていることが告げられている。
 婦人代議士たちは、いま危険な立場にある。自由党、進歩党の首領たちは、過日「婦人に得票をくわれた」と表現した。自党から立った婦人代
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