に、男へ投票するなら女も、と、婦人一名という工合に、気まかせに組合わされた。つまり、政府で売出す富くじみたいに、三様に書いてみれば、どれか一つには当るかもしれないという、不信頼と心だのみの入れ交った気分が動いたろうと思う。
 総選挙がすんで、ほぼ二週間経とうとしている。今日、わたしたちが日々目撃している光景は、全く独特なものである。ドイツと日本の食糧事情は最悪であると、警報がかかげられている。その記事の傍らに見るものは、連日連夜にわたる幣原、三土、楢橋の政権居据りのための右往左往と、それに対する現内閣退陣要求の輿論の刻々の高まり、さらにその国民の輿論に対して、楢橋書記翰長は「院外運動などで総辞職しない」「再解散させても思う通りにする」と、どんな背後の力をたのんでのことか、心あるすべての人々を憤らせる居直りぶりが示されている。『世界の顔』で、国際的信望を失いつつある鳩山一郎氏が、自由党という第一党の首領であり得ることも、おどろかれるし、現職のまま幣原首相が進歩党の総裁となって入党したことも、民主とはかかることにさえつけられる名称かと、日本の民主主義の異常さに、目を瞠るのである。
 四月二
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