の山の彼方の町に――見えなかったのだと思い、翌日雲が出たとき、その山に向っての道を歩き出す。
 親、夜になって見つけに来るが、見当らず。
 もうその児はまい子になってしまった。

     桃色と赤のスイートピー

 ◎銀座の六月初旬の夜、九時すぎ
 ◎山崎の鈍く光る大硝子飾窓
 ◎夕刊の鈴の音、
 ◎古本ややさらさの布売の間にぼんやり香水の小さい商品をならべて居る大きな赧髭のロシア人
 ◎気がついて見ると、大きな人だかりの中から、水兵帽をかぶり、ブロンドのおかっぱを清らげに頬にたれた蒼白い女の子(十一二歳位、古風な外套を着)が両手に赤と桃色のスイートピーを一束ずつ持って出て来る。
 ◎先泣いて居た女の子
 ◎人ごみの中の自分の心持
 ◎Aの心持
 ◎こい水色の紙テープで不器用にむすんだ束を二つ買う。



底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年5月30日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第2版第1刷発行
初出:同上
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2004年2月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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