制支配の一つの記念日です)主催在民の民主憲法を五月一日の世界のメーデーからわずか二日だけおくらして五月三日に実効を発せしめなければいやだという、その感情、そのものが今日の支配者、権力者が感じている民主主義というものへの考えかたをじつに適切に表現しています。なぜメーデーと一致してはいけないのでしょう。
こういう日本の民主化の過程にあらわれている変な歪み、それが文学の面においても反映しています。民主的文学確立の過程は、非常に錯雑しており困難しております。日本において民主化の諸問題が歪むのには、すこぶる深刻な後進的、半封建的条件が作用しているわけですが、それがまたある場合には外部的な力と結合されて、いっそう複雑になって来ました。ほかの国に資本主義が存在している以上、たとえ民主主義の確立している資本主義国においてさえも、今日ではさらにその民主主義を高め発展させなければならない矛盾と困難とが加わっております。
発達した資本主義的民主主義の国でも、その発展の矛盾の一つのモメントとして、前進性をもたない部分を生じてきているのは自然であり、その影響が、日本のさらによりおくれた部分と結びつくことも想像しやすいことです。
こういう急速な推移の中で、文学は一年間生活をしてきたわけです。私たちは新しい文学の中につよくヒューマニズムを求めています。民主的文学を求めています。私どもはそれを心から求めている。が、それらは私どもの希望するような創造活動として現れているかといえば、けっして、単純に肯定しかねる実際だと思います。混沌と、混乱が目立っていると思います。
今日の文学とジャーナリズム
文学は新しく出発してゆこうとしているのですが、さてその物質の基礎はどういう新しい条件をもっているでしょうか。
実際において、今日の文学は、やっぱりジャーナリズムの上に立っていることは否定されません。そのジャーナリズムは、民主的要素を加えてきたのは確かですが、本質において資本主義のジャーナリズムであり営業として利潤を求めているものです。現在日本には文芸雑誌だけでさえ三百余種の雑誌が出ているそうです。中にはそうとう大きい同人雑誌も少くありません。中でも特徴的な出版は鎌倉文庫の出版であります。ヨーロッパ文学の歴史の中でも経済力のある作家たちが集って、自分たちの出版雑誌社をもったことはたび
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