、その手足がなくなった後は、一対の輝かしい眼によって為し遂げて来たこと、その眼が奪われた後には、彼の強い頭脳と意志とによってなし得ること――「かつてあったことを文学的な言葉で若い時代へ伝えようとする」著作の仕事に従った。このような作家は歴史に今までなかった。オストロフスキーの文学に於ける地位は、その作品の芸術的な価値と共に全くここに重点を置いて、一個の新人間のタイプ、尊敬すべき生命の意味の理解者、実践者として観察され評価されるべきタイプなのである。
大衆の自覚とわが声でものを言わんとする情熱が強くなればなるほど、大衆の持つ社会的・文化的地盤が現実生活の中で高められれば高められる程、大衆の創意性とその表現の形とは多様になって来るものである。それ故、われわれのところに於ても、かつて政治的な活動をした人、組合の仕事をした人々が或る時期にその活動力を文化的な面に向けて働くということは当然あってよいことである。大いにあってよいことなのであるけれども、それは決して条件なしではない。それらの人々が若し過去に於いて健全な活動分子であったのならば、運動が当面していた時期の種々な制約の中におのずからあっ
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