資本主義の社会の現実の中で、それを本質的に飛躍させる力をもたない精神が物憂く非人間的な現実からの脱出をもとめてもがきまわった、落着きない眼玉にうつった事象である。
明日の芸術家の課題はディフォーメイションからの脱出である。新しいリアリズムの発見と完成とである。音楽でもオネガーは過渡期の古典となっている。文学に於る心理主義も第二次大戦後の今日からみれば古典的な現象である。洋画の世界で近代画家の必要なテクニックの一ツであるように思われているディフォーメイションもその徹底的な疑問がもたれていい時だ。ディフォーメイションがデッサンの不確さを蔽うというイージーな画業への害悪を取上げてみても真面目な画家ならそこに疑問を発見するだろうと思う。[#地付き]〔一九四七年六月〕
底本:「宮本百合子全集 第十三巻」新日本出版社
1979(昭和54)年11月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十一巻」河出書房
1952(昭和27)年5月発行
初出:「美術運動」第2号
1947(昭和22)年6月
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年4月23日作成
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